予防歯科について
口腔管理体制強化加算の施設基準
当院は、「口腔管理体制強化加算(略称:口管強)」という厚生労働省が制定した施設基準をクリアした歯科医院です。文字通り「口腔管理」を重視しています。
かつて、「疾患予防」のための受診は保険適用外とみなされ、高額な自費治療でなければ対応できないとされていましたが、近年になって、歯周病安定期治療や歯周病重症化予防治療という項目が新設され、疾患の予防やコントロールをする治療も保険適用となりました。歯医者は「痛くなったら治療をしにいく場所」ではなく、「病気にならないように予防しに行く場所」にシフトしているということです。
当院では、口腔内写真や歯周ポケット検査の結果を蓄積し、患者さん個人個人にあったオーダーメイドの口腔管理方法を提案することを最重要視しています。検査結果の要点やプラークの付着状況を撮影した写真を添付する形で、「管理計画書」を作成・印刷し、毎回お渡ししていますので、日常のセルフケアにお役立てください。
歯周病は虫歯のような強烈な痛みは発しないことが多いのですが、サイレントキラーとよばれる怖い菌です。全身に回ると心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病を引き起こす原因ともなりえます。
それまで歯や歯ぐきに問題がなかった人でも、食生活やライフスタイルの変化のなかで、虫歯や歯周病になるリスクが上がることもあります。若い方もご年配の方も、今一度、歯磨き方法を見直して、4ヶ月に1回は歯石をとりに受診する習慣を作ってみてください。
以下に当院が考えるケア用品の選択法、使用法について具体的に説明いたしますので、ぜひ参考にされてください。
歯ブラシはシンプルなものを
基本的にシンプルな構造のものを推奨しています。
真っ直ぐな形状でブラシ部分がたいらにカットされていてコンパクトなものが良いと思います。
安価なもので構いませんので、1ヶ月に一回は交換しましょう。
毛の硬さは「ふつう」のものが一番良いと思います。「かため」は汚れを強力にかき出しますが、その分歯を傷つける恐れがあります。逆に「やわらかめ」だと歯や歯ぐきには優しいのですが、汚れの除去率は劣ります。あいだをとって「ふつう」が一番良いかと思います。
歯周ポケットに入り込むという「極細毛タイプ」や歯と歯の間に入り込むとされる「山切りカット」など様々な商品が出ていますが、歯全体を清掃するにはかえって効率が悪く、歯や歯ぐきを傷つけるリスクもあるので注意が必要です。
もちろん、優しく弱い力で丁寧に磨くことが重要ですので、診療室で説明いたします。
細かい動きが苦手な方に向いている商品もありますので、お気軽にご相談ください。
電動歯ブラシの正しい活用を
電動歯ブラシは決して万能なものではありません。間違った使用法をすると、かえって汚れを取り残したり、歯や歯ぐきをきづつけることがあります。以下に長所と短所をまとめましたが、この特性を理解した上でご使用ください。
長所
・通常の歯ブラシよりも時間を短縮できる
・子供や高齢者など細かい振動が苦手な方には有用な場合も。
・携帯アプリと連動するなど、ハイテクな上位機種もあります
短所
・使い方を誤ると逆効果
・すみずみまで確実に汚れがとれるわけではない(歯間部や歯並びが不整な部分は別な器具が必要)
・研磨剤入りの歯磨剤は使用不可
・制限時間を守る必要がある
・替えブラシが高価
詳しい使用法の説明もいたしますので、診察室で相談してみてください。
日常的にフロスを使いましょう
歯ブラシだけでは歯の表面の約58%しか清掃できないのだそうです。
フロスなどの歯間清掃器具を使用することが重要です。
食べかすが挟まったときにだけ使う「糸楊枝」としてではなく、日常的にプラークを清掃するための「糸ブラシ」としてご使用ください。
フロスには大きく分けて指に巻きつけて使用する糸巻きタイプのものと、持ち手がついたホルダー付タイプがあります。
糸巻きタイプのほうが歯の形状に合わせて糸を歯に接触させることができるのですが、これは上級者向けです。糸巻きタイプを指に巻いて、疲れきった夜の就寝前に、前歯だけでなく奥歯まですべての歯間部に糸を入れるという細かい作業するのはなかなか大変なものです。
クリニカのY字フロスは清掃性・操作性・経済性に優れるので当院ではこちらを第一選択としておすすめすることが多いです。
連結部分などは歯間ブラシを使います
ブリッジや連結冠、歯肉退縮した大臼歯の分岐部など通常のフロスが入らない部分に適用します。
連結歯でない部分は基本的にはフロスを第一選択としますが、「すきっ歯」の状態になっている場合や、フロスがどうしても苦手な方の場合は、妥協案ではありますが歯間ブラシを使うことも有効です。
この場合、歯と歯の接触部が清掃できないこと、歯が傷ついたり歯肉が下がる可能性があることに注意してください。
やわらかいゴム製の歯間ブラシも販売されていますが、基本的には清掃効率の高い針金に細かい毛がついたタイプで奥歯に入りやすいようなL字型の歯間ブラシを推奨します。
スレッドフロスはブリッジの下などに有効です
指に巻くタイプの糸ですが、部分的にこしのある部分があり、ブリッジの下に挿入できます。
特にブリッジの歯のない部分(ダミー部分)や矯正装置の下の清掃に効果的です。
デンタルリンスは「液体の歯磨剤」として最初に使う
「デンタルリンス」という名称からか、「シャンプー」のあとの「リンス」として最後の仕上げに使うイメージかと思いますが、液体の歯磨剤として、歯磨きの最初に使用する方法を推奨しています。メーカーが提唱する使用方法にも最初に使用するよう記載しているものが多く存在するので是非探してみてください。
液体歯磨剤は液体であるがゆえに歯や歯ぐきのすみずみに流れ込みむだけでなく、頬や舌の粘膜に付着した細菌にも優れた殺菌効果を発揮します。是非、最後のリンスではなく始めの「シャンプー」として液体歯磨きを使用してみてください。
ただし、液体タイプには基本的に「フッ素」という歯を強化する成分が含まれていません。後述するチューブタイプのフッ素入り歯磨剤を併用するとより効果的です。
また研磨剤というステイン(着色)を除去するための粒子が入っていません。これは歯を傷つけずに優しく磨く上では好都合ですので、電動歯ブラシでも使用できます。ただし、短時間しか磨かない人はステインが残りやすいこともあるかもしれませんので注意が必要です。
チューブ入り歯磨剤で再石灰化を、ただし・・・
基本的にクリニカやクリアクリーンなど市販の安価なもので構いませんが、歯の強化のために「フッ素」配合のものを推奨します。あるいは「ハイドロキシアパタイト」配合のものも優れた再石灰化をもたらします。
「フッ素は発がん性がある」という情報をインターネット上で見受けますが、適量を守る上ではなんら問題はありません。
ただしステイン(着色)をとる目的で配合されている研磨剤(清掃剤や無水ケイ酸などと表示されています)は、大量に使用したり長時間作用させると歯を傷つける恐れがあります。市販の一般的な歯磨剤を使用する場合、始めは何もつけないか、前述の液体歯磨剤を使用して丁寧に磨き、最後の1~2分、少量だけチューブ入り歯磨剤を歯ブラシにつけて仕上げ磨きする方法をお勧めしています。フッ素は水でゆすぎすぎると流れてしまうという特性もあり、できるだけ最後の段階で使用し、一口だけの少量の水でゆすぐのが最も歯の強化になるやり方なのだそうです。
また数は多くありませんが意図的に研磨剤を少なくした商品もございます。この場合、丁寧に時間をかけて磨くあいだ中ずっと歯磨剤を作用させても、歯を傷つけるリスクが少ないため、歯ぐきを活性化する成分やステインを溶解する成分などの各歯磨剤特有の効能をより効果的に発揮することができます。一般的なものより高価ですが、当院でも販売していますのでご利用ください。